日本全土を一気にカバーする楽天のスペースモバイル計画

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楽天モバイルは年内に人口カバー率を96%にすると宣言していましたが、半導体の供給が需要に追い付いていないことに伴う機器納品遅れに伴い、計画を後ろ倒しにして、「年度内」に人口カバー率を96%にすることを発表しました。(21年9月時点で基地局は3万局超)

人口密度が多い都市部であれば基地局を一つ設置することで人口カバー率を大きく増やすことができますが、人口密度の低い地方では基地局を一つ設置しても人口カバー率を大きく上げることができません。したがって、多くの基地局を設置していかないといけないのですが、半導体不足が障壁になってしまいました。

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スペースモバイル計画

ただ、楽天モバイルには米国の衛星通信事業者AST&サイエンスとの協業で、普通のスマホと人工衛星の間で直接の通信ができるようにする「スペースモバイル計画」があります。もしもこの計画が成功すれば、空を見通せる場所であれば通信ができるので、基地局頼みで全部を網羅しなくてもエリアをカバーすることができます。カバーされる範囲によっては、海の上からも通信ができるかもしれません。この計画がうまくいけば、ほかの携帯電話会社に対する大きなアドバンテージになります。

災害発生時の対策にも

単に通信エリアが広がるというメリットだけではありません。大震災などの基地局が機能を失うような災害があった際に、スペースモバイル計画で衛星通信ができるようになっていればバックアップ回線としても活用することができるようになります。

現在の衛星携帯電話

今までも、衛星電話がありました。ただ、衛星から発信される電波は地球上との距離が遠いので微弱な電波になってしまい、衛星携帯電話はとても大きくなってしまっていました。昔の携帯電話のような感じです。

こちらはNTTドコモの衛星携帯電話サービス、ワイドスターの端末です。

ワイドスター

これだけ大きな端末であっても、データ通信はベストエフォート型で上り最大144kbps/下り最大384kbpsとなっていますので、今の4Gや5Gと比べるとかなり見劣りします。

スペースモバイル計画での工夫

なぜ、スペースモバイル計画では通信衛星と普通のスマホが直接の通信ができるようになるかというと、一つは高度約730Kmの低軌道に人工衛星を打ち上げることです。二つ目は通信衛星に24メートルもの巨大なアンテナを搭載することです。

2020年4月にFCCに提出された資料には下記の情報がありました。

  • スペースモバイルの衛星は全243機
  • 22.5度ずつの角度で地球を取り巻く16の軌道にそれぞれ15機の衛星を配置
  • 高度730キロメートル(近地点)から740キロメートル(遠地点)のほぼ円形の軌道を周回
  • 衛星は直径24メートルの大口径アレイアンテナを装備
  • ミッション期間は打ち上げから10年間
  • 運用終了後に軌道から離脱するまでの時間は、推進装置が正常に機能する場合は13年、機器の不具合によって推進装置を利用できない場合は、21.14年と推定

2020年12月に投資家向けに公開された情報には下記の情報がありました。

  • スペースモバイルは2023年に赤道地域の49カ国でサービスを開始する目標
  • 赤道地域向けの「フェーズ1」では20機
  • 北米、欧州、アジア地域でサービスを開始する「フェーズ2」では45機
  • 2024年には168機まで衛星数を増加
  • 2027年に233機
  • 2028年には336機

2021年に10メートルのアンテナ展開試験を行う実証機「BlueWalker 3」を打ち上げるという説明もありましたが、まずはこの実証実験がうまくいったのか否かが気になるところです。

技術的な課題

国内の業界関係者からは、特に地球上のスマホから発せられる微弱な電波を約700Kmも離れたところにある人工衛星との間で安定的な通信が続けられるのかどうかということです。今後の実証実験の中でどこまで安定した通信が可能なのか検証が進められるものと思います。

技術の進歩

イノベーションのジレンマにあるように、破壊的なイノベーションは最初はとるにたりない性能の低い技術であっても、技術の進歩にともなって実用的な領域にまで食い込んできて、それまで常識的で継続して発展してきた技術を一気に追い越してしまうという事例は数多くあります。

現時点では地上の普通のスマホの電波を衛星でとらえることは難しかったかとしても、今後の技術開発の中では間違えなく乗り越えることができる時期が来るのでしょう。あとは実用化できるまでの期間の勝負です。

 

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