例年であれば夏になると電力需要が増加するため節電要請が企業などに対して行われるのが常でしたが、2025年はなぜか節電要請を耳にしません。何があったのか調べてみました。すると、こちらの経済産業省のレポートにその経緯が簡潔にまとめられていました。
電力需給の見通しは下記のようにまとめられています。
- 2025年度夏季は、全エリアとも10年に一度の厳しい暑さ(猛暑H1)を想定した電力需要に対し、最小予備率時において安定供給に最低限必要な予備率3%を確保できる見通し。
- 一方で、異常気象や燃料調達先の国際情勢の変化、火力発電所の東京湾・太平洋沿岸への集中等、自然災害に対して脆弱な構造にあること等を踏まえると、引き続き電力需給は予断を許さない状況。
- また、高需要期に加え端境期の電力需給にも配慮しつつ、仮に需給バランスが厳しくなることが見込まれる場合には、必要に応じて需給対策(補修調整等)を講じる。
2025年の夏は全エリアともに10年に一度の厳しい暑さのときの電力需要を想定して準備していたことが大きかったようです。この前提においても予備率は、各電力会社の管内で7月は、北海道、東北、東京、中部、北陸、関西が8.2%、中国と九州が11%、四国が30.6%、沖縄が13.4%となっています。さらに8月についても、北海道、東北、東京、中部が7.6%、北陸、関西、中国、九州が9%、四国が21.4%、沖縄が20.7%となっていて、最低限必要な3%を大きくクリアしています。
なお、本レポートでは節電要請を実施しないとはしつつも、下記の状況の変化によっては需給がひっ迫する可能性がある点を指摘しています。
- 供給サイドは異常気象、地政学的リスクが高まる中での燃料調達先の国際情勢の変化、発電所のトラブル、火力発電所の東京湾・太平洋沿岸への集中等、自然災害に対して脆弱な構造えると、引き続き電力需給は予断を許さない状況
林官房長官は5月23日の午後の記者会見で「政府として節電要請は行わない方針だが、異常気象に加え発電所のトラブルによる停止のリスクなど予断を許さず、電力需給のモニタリングを通じて緊張感を持って状況を注視する。仮に厳しい状況が見込まれる場合には、供給力対策などを適切に実施し電力の安定供給の確保に万全を期したい」と発言しています。
したがって、発電事業者に対しては保安管理の徹底の要請等の供給力対策、原子力発電所の再稼働、連系線の増強等の構造的対策を講ずることを求めています。
また、需要側に対しては、企業や家庭の省エネ対策の推進を求めています。もちろん、この酷暑の中でエアコンを使わないで節約すると命にもかかわってしまうので、消費者ができることは、誰もいないところの照明を消す等の対策になるでしょう。ここは日本国内の家電メーカーに省エネ家電の開発に期待したいところです。
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