技術進化による改革と移り変わる業態

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東洋経済オンラインに9月にIT担当相になった竹本直一氏の記事が掲載されていました。この記事で初めて知ったのですが竹本氏は「日本の印章制度・文化を守る議員連盟」の会長なのだそうです。Wikipediaでさらに情報を探してみると、「印鑑を業としている人たちにとって死活問題」というキーワードがありました。確かに最近、印鑑を使う機会が非常に減ってきています。

20年ほど前までは会社内での決裁は持ち回りの紙に日付印を押す形で行われていましたが、現在では電子決裁が当たり前になってしまいまいた。もはや、紙で決裁を持ちまわる人はいません。

一方で私生活の方では印鑑を使う機会はまだ残されています。クレジットカードの申し込みや口座の開設などの文書では印鑑を押しますし、宅配便の受け取りで認め印を押す場合もあります。さらに役所に出す書類でも印鑑を押すのはほぼ当たり前のように必要です。

また、印鑑登録という制度もまだ残っていますので、どちらかというと私生活の方が遅れている感じです。紙に印鑑を押すという仕組みが残っていると、その紙は役所などに持ち込んで手続きをしなければいけませんので、やはりこのままでは諸外国に立ち遅れてしまいます。平日に会社の休みをとって役所に出向くというのは現在では現実的ではないと思います。

2019年5月にはデジタルファースト法が可決・成立していますので、デジタル化の流れに勢いをつけていかなければなりません。

そうなれば、やはり印鑑の売上は減ってしまうことは致し方ない部分が多いと思います。例えば、家庭用プリンタの普及とともに街の印刷屋さんは激減しました。スーパーマーケットで紙パックの牛乳が安く販売されると牛乳の配達店はその数を大きく減らしましたし、インターネットの普及により紙の新聞の購読者も減ってきています。Amazonなどのインターネット上での書店の出現により街角の本屋さんも数を減らしています。このように技術の進化に伴い影響を受ける業態は必ず出てきます。

「印鑑で商売をしている人たちを守るためにどうするか?」という発想でデジタル化の進展を食い止めるようなことがあってはいけません。逆にデジタル化を進展させる中で、印鑑などの技術をどう活かしていくかという発想であれば良いと思います。IT担当相の記者会見での「印鑑をデジタルで全部処理できないかという話があるが、印鑑を生業とする人たちにとっては、死活問題だから待ってくれ」という発言は、どちらかというとデジタル化にブレーキをかけかねない発言なので、IT担当相の発言としてはとても残念でした。

今はITが取りざたされていますが、ソフトウェアを作る仕事自体、そのうち人工知能が自動的にプログラムを生成する時代がもうそこまで来ているかもしれません。その時に波に乗っていると感じた産業であっても、十年、二十年と時が経つうちに廃れていってしまうことがよくあります。会社の寿命30年とも言われますが、当時の富士写真フィルム社のように自社の主力産業が斜陽化したとき、次の事業を立ち上げることが出来ているかどうかが商売を進めていく中では重要なファクターになります。

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