週刊ダイヤモンドの記事の中に、平成元年の世界時価総額ランキングと平成30年の世界時価総額ランキングの比較が載っていました。これを見ると、30年の間に何が変わったのかがよく判る結果になっています。
こちらが平成元年の世界時価総額ランキングのベスト10です。
- 1位 日本電信電話(NTT)
- 2位 日本興業銀行
- 3位 住友銀行
- 4位 富士銀行
- 5位 第一勧業銀行
- 6位 IBM
- 7位 三菱銀行
- 8位 エクソン
- 9位 東京電力
- 10位 ロイヤル・ダッチ・シェル
こちらが平成30年の世界時価総額ランキングです。
- 1位 アップル
- 2位 アマゾン・ドット・コム
- 3位 アルファベット
- 4位 マイクロソフト
- 5位 フェイスブック
- 6位 バークシャーハサウェイ(米国の投資ファンド)
- 7位 アリババ・グループ・ホールディング
- 8位 テンセント・ホールディング(中国のネット企業)
- 9位 JPモルガンチェース
- 10位 エクソンモービル
日本企業がランキングから無くなってしまったという点が一目見てわかる事実ですが、もう一つは市場を創造してきたような企業が上位にランキングしているところが大きいと思います。
クレイトン・クリステンセンのイノベーションのジレンマに例えると、日本の企業は「持続的イノベーション」の精神で少しづつ製品の品質や機能を改善することに注力してきました。
しかし、現在ランキングで上位になっている企業は、最初は実用になっていなかったような新しい技術に着目し、その技術が実用の域に達するタイミングで一気に市場を奪っていったとも言えます。
インターネットの世界も最初は文字情報をやりとりすることが精一杯でしたが、回線速度の進化やHTML等の規格の進化、セキュリティ技術の進化でネットで買い物をしたり、銀行や証券の取引をすることは当たり前になりました。この破壊的イノベーションの陰で日本の金融機関は大規模な店舗統合の必要に迫られたり、街の本屋が衰退したりといった大きな変化が起こっています。
コンピューターの技術も最初は能力が足らなかったので、一つの業務を処理するのが関の山でしたが、能力向上や複数のコンピューターを連動して動かす技術の進歩により、複数のシステムを遠隔地にデータセンターで処理する、いわゆるクラウドが一般的になってきました。このような技術の変化の中で一気に市場を取りに行ったのがAmazonであったと言っても過言ではないでしょう。
日本でも楽天の三木谷社長など、イノベーターとしての能力を持った人はいましたし、日本の市場は大きく変えることに成功していると思います。例えば、楽天市場や楽天銀行、楽天証券、楽天カードなどの取り組みです。しかし、残念ながらグローバルという視点ではAmazonに後れを取ってしまったことが、平成30年のランキングベスト10に楽天の企業名がないことの理由だと思います。
日本でも教育の在り方、働き方改革などの取り組みを通して、職場で猛烈に働くことを美徳に感じていた時代から、創造することの力を強化する方向に移ってきています。この取り組みが功を奏すのには、もう少しの時間がかかると思いますが、次の30年には日本企業がまた大きく時価総額ランキングの中身を書き換えていくのではないでしょうか。
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