日本のインフラシステムがOracle databaseを好んで使った結果とこれから

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 西暦2000年前後でしょうか。それまでは国内のミッションクリティカルシステムでは主に大型汎用機(メインフレーム)が使われてきましたが、オープンシステムの性能や信頼性が向上したことで、ミッションクリティカルシステムでも相次いでSolarisやWindows、LinuxなどのOSを利用したオープンシステムへの移行が行われました。

 現在では、全国民を対象にしたシステムや都市銀行のシステム等、いわゆる超大規模なシステムでは汎用機が活用されていますが、それ以外ではオープンシステムを採用しているところが多くなったと思います。

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オープンシステムのDBMS

 このオープンシステムで利用されているDBMSは大半がOracle Databaseかと思います。確かに採用実績が多いことからの安心感や、信頼性や性能、安定性といった面でも良いDBMSだと思うのですが、いくら何でもシェアが高くなりすぎて、ここ数年では高いライセンス料や保守料に悩む利用者も増えてきています。

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 なぜ、ここまでシェアが大きくなったのか、一つは2000年前後以降の政府調達で、あまりにも「あるベンダーに依存するシステム構成はダメ」という雰囲気に満ち溢れて、「ベンダー依存」の定義が曖昧なままここまで来てしまったところが大きいと思います。

ベンダー依存度

 ベンダー依存がNGなのは、その上に作ったアプリケーションがある会社のミドルウェア、ハードウェアに依存してしまって、別の会社のインフラに乗り換えるときに大きなスイッチングコストが発生することで、競争原理が働かなくなることを指しています。

国内の会社

 国内の会社で見ると、日立製作所がHiRDB、富士通がSymfowareといったDBMSを販売していますが、これらは日立や富士通にベンダー依存しているように見えるから、Oracleを採用しておけば無難という方向に流れた面が強いと思います。たあ、実際にはHiRDBを採用したからといって、OSやハードウェア基盤が日立製品に限定されることはありません。

動作環境:ノンストップデータベース HiRDB:ソフトウェア:日立
HiRDBの動作環境を説明します。

 DBMSとアプリケーションプログラムの関係に目を向けると、リレーショナル型データベース(RDB)であれば、本来は標準的なSQLを利用している限り、HiRDBやSymfoware、Oracleの間でアプリケーションの移植が簡単にできるはずではありますが、各社ともに性能や信頼性を高めるためのオプションとして言語を拡張している部分があるので、アプリケーションがこの方言を利用する度合いが大きいと、DBMSへの依存度が高まります。

 したがって、現在のアプリケーションの多くはOracleへの依存度が高くなっている場合が多く、「ベンダー依存はNG」だったはずなのに、Oracle依存になっているという事態になっています。

 日本のソフトウェア製品はグローバルで活躍できる製品が少ないという議論がありますが、日本の各官公庁が率先して外国製のDBMSなどのミドルウェア製品を採用したことで、国内各ベンダーがソフトウェアの投資耐力が少なくなった面の影響も大きいと思います。

 本来は構築しようとしているシステムの特性から見て、必要な機能、性能、信頼性、可用性、価格などを評価して、もっとも適切な製品を選定すべきであったと思うのですが、安易に「ベンダー依存回避」という言葉のもとに外国製品を採用し自国のIT産業を減速させるという面で、非常に愚かなことをしてきたのではないでしょうか。

今後の社会創造

 現在、政府はSociety5.0の実現に向けた構想や方針を打ち出しています。今一度、政府は安易にデファクトスタンダードな海外製品を安易に選択するのではなく、製品を正しく評価し、本当の意味で良い製品を選択する必要があるのではないでしょうか。

【2024年9月9日追記】

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 数年前からオンプレミスでシステムを持つよりも、クラウドに載せ換えた方がコストが優位になるということで、AWSを中心にしたクラウドへ移行するシステムが増えています。しかし、クラウド自身にも特殊性があるため、ある意味、ベンダーロックインになってしまいます。もしも、クラウド利用料の値上げなどがあったときには、システムの運用コストは上がってしまうため、政府が目標としている数字は程遠くなってしまいます。本当に政府システムをクラウドにのせることが正しい選択だったのかどうかは、検証を進めなければいけないと思います。

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