NHKニュースをみていると、所得上位62人の資産(およそ206兆円)が下位36億人(世界の人口の下位半数)と同じだという報道がありました。貧富の格差が急速に拡大していることを示唆する数字です。
この数字は貧困問題に取り組む非政府組織であるオックスファムインターナショナルというところの報告書で明らかになりました。出典は米国経済誌のフォーブスの長者番付やスイスの金融機関大手であるクレディスイスの資産動向データに基づき算出されたそうです。
この所得上位62人にどんな人が名前を連ねているのが気になりますが、マイクロソフトの創業者であるビルゲイツ氏やユニクロの柳井正会長兼社長が含まれていると記事では紹介されていました。
ビルゲイツ氏や柳井会長は何もしないでお金を集めているわけではなく、類い希なる様々な思考や行動の結果として所得が大きくなっているので、一概に批判すべきものではないと思いますが、もしユニクロから製造を委託している工場や従業員に充分な支払いが行われていなかったとすればそれは問題かもしれません。ただ、記事の中ではそこまでの言及はありませんでしたので、なんとなく金持ちが悪いような後味の悪い印象の記事になっていました。
ただ、富裕層の資産が近年で急速にふくれあがっていることも事実で、上位グループの資産はこの五年間で計約5000億ドル増えています。一方で下位半数の資産は1兆ドルが減っているということなのでことなので、所得上位者にお金が集まっていることだけは事実のようです。
20日からスイスで世界各国の政治や経済界のリーダーが集まるダボス会議が始まるので、それを前にして「オックスファム」という貧困問題に取り組むNGOが公表しました。格差解消のために社会投資や最低賃金の引き上げ、大企業の租税回避への対策を検討するように訴えることが目的です。
ダボス会議でどんな議論が行われるのか気になるところです。
【2025年9月4日追記】
その後も所得格差は拡大中
世界でもっとも富裕な8名(マイクロソフトのビル・ゲイツ、アマゾンのジェフ・ベゾス、メタ社のマーク・ザッカーバーグ、オラクル創業者のラリー・エリソン、ブルームバーグのマイケル・ブルームバーグ等)の個人資産を合わせると、約48兆6000億円となり、これは世界人口の36億7500万人分の資産の合計と同じ額だという報道がありました。
資本主義は自由競争を前提としているので、所得格差は必然的に生じます。しかし、大きな資本は利子が利子を生むような自己増殖をしていくため、税徴収などに伴う分配機能が働かないと、格差が拡大・固定化する傾向があります。
普通の労働者の所得はGDP成長と並行して伸びていきますが、資本家は資本収益率(r)で富を増やすことになります。したがって、資本収益率(r)が経済成長率(g)を上回る(r>g)と、資本所得を得る富裕層の所得はより速く増加するため、格差が拡大する傾向があります。
日本国内でも格差は広がっていて、しかも少子高齢化の急速な進展に伴い、働いている人たちの税負担や社会保険料負担が増加しているうえ、インフレに伴い物価が上がっているため、生活が苦しくなっています。
現在、資産運用で得た利益に対して、20.315%の資産課税が行われていますが、この見直しについての議論もあり、今後、分配に関する議論は活発に行われていくことになると思います。
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